ひとくちに剃刀の替刃といってもいろいろな種類の替刃があります。
カートリッジから両刃片刃まで。
プラ新法でホテルアメニティとしてやり玉に挙がったディスポカミソリと比べたら、両刃や片刃の替刃は、金属製のたった一枚の替刃を交換するだけで済みます。
プラ新法でホテルアメニティにまで目くじら立てた立法は、本当にホテルアメニティのディスポを悪玉だと見做してるなら、両刃カミソリや片刃カミソリを本気で普及させてみて欲しいですね。
樹脂削減がポーズだけじゃなく本気なら、両刃剃刀や片刃剃刀の普及こそが根本的な解決策なのでは?
そのうえ、もし替刃さえ研げてしまうようになったらどういう世界になるでしょう?
もはや廃棄物などなく、両刃剃刀や片刃剃刀のサステナビリティは、ついに西洋剃刀に並んでしまいます。
今回はその
「替刃を研ぐ」を、器具を活用して試行錯誤したら実用レベルになった
というお話です。
厚刃片刃の替刃用に「The STAG Co. Safety Razor Sharpener」
先日、ウェッジ刃のアンティーク剃刀「ASR Ever-Ready lather catcher」を入手していました。

この剃刀用にウェッジ刃が研げたら…と目論んでフリマで同時に入手してた替刃研ぎ器、STAGシャープナーです。

目論見は的中し、今後ウェッジ刃によるシェービング体験の日常化に役立ちそうな満足感を得られたことを、上記の記事に投稿してます。
なおこのSTAGシャープナーはウェッジ刃用ではなく、もともと替刃を研ぐためのものです。
そこで、
まずはGEM刃を天然砥石で研いでみました
最初の砥石は本山巣板、2番目の砥石は本山浅黄です。
ローラー部が砥石表面を転がってくれるから、研いでる刃角が保たれます。
続いてVALET刃を研ぎます。

御覧の通り、刃線はガタガタですね。
このVALET刃をSTAGシャープナーに取り付ける様子です。
動画でお察しの通り、替刃を固定するかみ合わせの締め付けはかなりきついので、注意が必要です。
なお余談ですが両刃のように薄すぎる替刃は、本器だときついかみ合わせを押し広げる前にすぐ撓んでしまい、また両刃の細長いスリットも刃の撓み剛性にはマイナスなようで、取り付け自体が困難でした。
このVALET刃も天然砥石で研いでみました。
最初の砥石は丹波青砥、二番目の砥石は本山浅黄&三河白名倉天上です。
西洋剃刀のように研ぎのフィードバックを砥石から求めようとしても、STAGシャープナーのローラー部がスムーズすぎるので、思わず力が入りそうになります。
砥石をSTAGシャープナーで不必要に押さないよう、研いでる音を頼りに出来るだけ力を掛けず軽く転がしていきます。
集中して研ぎ音を聞いてたら、最初はざらついた音が次第にさらさらとした音に変わるのが分かります。
ガタガタな刃線だったVALET刃にも、小刃のような切れ刃が付きました。

でもよく見ると、上の写真の通り、切刃がスマイリングエッジ的に弧を描いてました。
もしかすると砥面が凹んでたかも知れません。
まっすぐな刃線を持つ刃物の直線を維持するためには、刃物を研ぐ前に砥面を平らにする作業が必要です。
また、今回の研ぎにはこだわりで天然砥石を使いましたが、このSTAGシャープナーのような研ぎ器は研いでる間の手元フィードバックには欠けるので、砥石には敢えて天然砥石を選ばなくとも、人造砥石でも良い結果が得られるかもしれないと考えました。
そこで試しに
本器でウェッジ刃を、今度は人造砥石で研いでみます。
天然砥石と違って人造砥石は躊躇なく面直し出来ます。
まず刃を研ぐ前に、今回使う砥石全部を先に面直ししました。
面直しには、左の写真のように砥面に鉛筆で模様を入れます。


右の写真は面直し用として使ってる砥石。
ダイヤモンド砥石(ニトリ)400番は中砥と仕上砥用に、面直し用砥石は荒砥用にしてます。
面直しの様子。
最初は左のように、砥面の周囲から模様が消えていきます。
凹んでる箇所は大体真ん中なので。


さらに面直しし続けると、次第に砥面真ん中に残された模様が小さくなっていきます。
実は凹みが小さくなってからが面直しの正念場。
ここから先がわりと長い、といつも感じてます。
砥ぎ初めよりも最後の方が同じ深さでも凹み周囲を削り取る量が多くなる、というのも理由の一つだし、砥面真ん中の凹みが作る空間の気密性が上がることによって研ぐときの抵抗が大きくなるということもあるからでは?と推測してます。
全部の人造砥石の面直しが終わって全ての砥面を平らにし、ようやく刃線の直線を保って研ぐ準備ができました。
人造砥石でウェッジ刃を順に研ぎました。
研ぐウェッジ刃は当初、刃が欠けてました。
写真(下左)をよく見ると、刃線の右側が2か所かけてるのがお分かりいただけるかと。
刃が欠けてるときはとにかく荒砥から。
刃欠けをなくすまでを荒砥の出番にしてます。
最初に使ったのは中古入手の荒砥(写真下左/たぶん#150-#220の金剛)。


続いて#320の荒砥、シャプトン刃の黒幕(写真上右)。
刃線の左にはまだうっすらと欠けが見えますが、かなり消えました。
続いて中砥に移ります。
800のキングデラックス(下左)。
もう欠けは見当たりません。
あとは荒砥が作ったざらざら面を平滑にするイメージで研ぎます。


続いて、#1500-#2000ぐらいのセラミック砥石、伊予焼磨(上右)。
最終仕上は#6000のキングS-3、最後は本器と革砥でストロッピング。
全て人造砥石で仕上げたウェッジ刃で剃ってみました。
すると、残念ながらShave-Readyと言えるほどの剃り味にはなりませんでした。
研ぐのに使った人造砥石の最後の番手が#6000番だったからかも知れません。
別の日に
この人造砥石で研いだウェッジ刃を、天然砥石で最終仕上しました。
本器にだいぶ慣れてきて、研ぎ終わりには砥泥集めを兼ねて引き研ぎ工程を加えてます。
この天然合砥で仕上げたウェッジ刃で剃った感触は素晴らしいもので、改めて最終仕上げ用としての天然本山合砥の価値を感じることができました。
なおストロッピングで革砥にかけるときはウェッジ刃だと本器を使うよりも、ホルダー同梱のハンドルを使った方が手軽で良い刃が付きます。
STAGシャープナーのおかげで、欠けたウェッジ刃が包丁を研ぐ程度の手軽さで、実用レベルに甦りました。
今後GEM刃やVALET刃をはじめとするさまざまな厚刃の片刃に使えるめどが立ちました。

両刃の替刃用に「富士電機はやと」と「L.A. FLINKER Blade A-Year Sharpener」の併用
3年前に両刃替刃研ぎ器である富士電機「はやと」を既に入手し、一度記事を投稿してます。

ホーニングは手持ちの富士電機「はやと」で
入手当時から今日までは、ビンテージ剃刀に付属してた昔の替刃を復活させる用途で、ときどき使っていました。

入手時から研ぎ方を少し進化させ、今では逆回転を加えて、押し研ぎと引き研ぎを均等にしています。
でこれでどれだけ研げるようになったかというと、使い始めて大体5回ほど使った替刃と同じぐらいの状態にまでにはなる、という個人的感想です。
ストロッピングは「L.A. FLINKER Blade A-Year Sharpener」で
このたび新たに、こちらのBlade A-Yearシャープナーをフリマで入手しました。

Blade A-Yearシャープナーは替刃の種類に合わせアタッチメントプレートを替えて噛ませ、革砥でストロップします。
本品にはちょうど両刃替刃用のプレートが付属してました。

替刃装着の仕方とシャープナーの動作原理はこのようなものです。
このBlade A-Yearシャープナーを革砥の上でなぞると、Valet Autostropのように替刃ホルダー部が革砥に倒れ込んで研磨されます。
今回は2つある手持ちの革砥のうち、表面の柔らかいラティーゴの革砥のほうで研いでます。
西洋カミソリのストロップ用として床屋での定番だったコードバンの革砥も持ってるんですが、コードバンをこのBlade A-Yearシャープナーでなぞっても、革砥の表面がテカテカで替刃が倒れるまでのグリップを得ることができず、ストロッピングになりませんでした。
ステンレス替刃を研ぐ
5回使ったステンレス替刃をBlade A-Yearシャープナーでストロッピングしてみます。
替刃はビンテージのSchick Super Stainless。

3-4回使った替刃と同じぐらいの状態に漕ぎつけることが出来ました。

6回目・7回目までこの替刃をストロッピングして使ってましたが、その都度3-4回目のような状態に戻り、永切れする替刃のような感を受けました。
炭素鋼替刃を研ぐ
カミソリ用としてステンレス替刃が一般的な現在はレアな炭素鋼替刃。
今までは錆びやすさから一度使ったら廃棄してました。
そんな炭素鋼替刃も今回はBlade A-Yearシャープナーでストロッピングしてみます。
こちらもビンテージのGillette Blue。

今回は3日間使った替刃の4日目から研ぎ始めました。
わずかな錆びを取るため、ストロッピングの前にまずは先ほどのはやとでホーニング。
はやとでのホーニング後にBlade A-Yearシャープナーでストロッピングしたら…
なかなか剃り心地の良い替刃が出来ました!
個人の感覚ですが、使い始め2日目の替刃のようなスムーズさです。
翌日の5日目にも同じ替刃を再び研いで剃りましたが、前日と同じスムーズさが得られました。
どのぐらい研げてるかを視覚で確かめたくなり、状態の悪い替刃を素材に、マイクロスコープで研ぎ具合を観察してみました。

左から「研ぐ前」「ホーニングのみ完了」「ホーニング&ストロッピング完了」です。



刃こぼれの替刃にも切れ刃がついたように見えます。
両刃カミソリの替刃は今後、この「はやとでホーニング」と「Blade A-Yearシャープナーでストロッピング」を併用で研ごうと思います。

両刃カミソリの炭素鋼替刃を研いで使うなら、ホルダーはTTOが良き
研いだら直感的にシェーブ体験が向上しますので、時間があれば毎日同じ替刃を研ぐことさえしたくなりそうです。
そんな場合、TTOタイプのホルダーは替刃脱着の手数が少なく、楽でした。

同じ炭素鋼替刃を連続で使おうと思うなら、替刃は都度乾かしときたいし、替刃からホルダーへの貰い錆びも防ぎたいです。
つまり「シェーブ後の保管の際、ヘッドを開くだけで簡単に替刃を露出させられる」TTOなら、炭素鋼替刃の連続使用に向いてる気がしました。
シェーブ後にヘッドを開いとくだけで
- 替刃脱着が楽
- 替刃を乾かせる
- 替刃からホルダーへの貰い錆防止
を期待できそうだからです。
替刃を使いまわす時には消毒殺菌は忘れずに
肌が荒れないように、研いだあとの刃は、本レザー含め必ず消毒してます。
消毒はアルコール除菌と紫外線殺菌を併用してます。

最近はLEDなステリライザーが入手しやすくなってますので、自分用カミソリ用品だけならと

こんな商品で手軽に殺菌しています。
コメント
とても勉強になります。
剃刀を研ぐにはどうしても角度の維持などで、感覚的な部分が多く苦手なのですが
治具があると私でも希望が持てました!
ともだちのスナフキンNさまこんにちは!
私の冗長な記事にお付き合いくださりありがとうございます。
ここで紹介した治具を知るまでは、私も替刃を研ごうなんて概念すら持ちえませんでした。
これら治具を知ったことで、今後は替刃のしかもビンテージ炭素鋼ものを頻用しようと企て中です。
あと動画いつも拝見しています。
おかげでShavetteにも興味が湧きました。
これまでACジェネリックしか持ってませんでしたが今ウェッジ刃のストロッピングに使えそうだとにらんだ1品を注文中です。
届いたらまたここでインプレしたいと存じてます。