この天然砥石、ネットオークションで格安で入手したのですが、ちょっと不思議な砥石です。
天然砥石はあまり詳しくないのですが、側面は積層がひび割れしてるぐらい板目が目視できますし、研いだ切れ味からも天然の仕上砥だと思うのですが…
ご覧の通り大変柔らかく、砥汁の量は人造砥石並みです。
そして側面底面にははつり痕が見られず、角が面取られたように丸く減ってます。
なので人造砥石と感じたほどですが、今のところは「とんでもなく古い天然砥石」と思うようにしてます。
あまりに柔らかすぎるので剃刀には使ってませんが、研ぎ効率が良いので鉋刃などの最終仕上げに使ってきました。
後日、「巣板」を2枚入手しました。
この砥石はその2枚と色は異なるものの、柔らかさや砥汁量、研ぎ効率がその「巣板」2枚に似ています。
その後この砥石を巣板と看做すことにしています。
今回はこの謎の砥石が大変役に立った話です。
鉋刃を研ぐ
このブログにもこれまで何度も鉋刃の研ぎは投稿してきました。
木工する機会が増えたからです。



ずっと、中学校の選択授業で買った鉋を使ってます。
そろそろ新しい鉋を買っても良いとは思ってますが「古い道具をメンテ出来る技術を身に付けることが新しい道具を買う権利」、もっと申しますと

古い道具をメンテできるようにならなければ、新しい道具を買う資格はない
ぐらいの自縄自縛してます。
だからこれまでは何とかしてこの古い鉋を使い続けようとしてきました。
このような経緯で鉋は自分で研ごうと、研ぎ方はネットで学んできました。
その過程で検索したいくつかの記事や動画では、研いだ後の鉋刃の切刃面が砥石とくっついて立っている様子がアイキャッチになっていました。
これを見て「鉋を研いでいます」と言える入り口に立つには、最低限
鉋刃が立つようになる
なのでは?と思って、これに挑戦を思い立ちました。
鉋刃が立つようになるには、確かに最低でも切刃面が完全なフラットでなければなりません。
またその切刃面をフラットにするには、すべての砥石が面直しでフラットになってなければなりません。
これまでの鉋刃の研ぎでは一度も「刃が立つ」状態になりそうな雰囲気はありませんでしたが、まずは挑戦してみることにしました。
今回使った砥石は、以下の写真のうち、左上の白い中砥と左下の黒い荒砥を除いた、
- 荒砥・シャプトン刃の黒幕#320(ケース外の青)
- 中砥・キングデラックス#800(ケースの中のレンガ)
- 中砥・スエヒロ両面#1000(ケースの中の縦の裏側)
- 仕上砥・スエヒロ両面#3000(ケースの中の縦のクリーム)
- 長仕上砥・キング#6000(ケース外の右から2番目)
- 最終仕上砥・上記の謎の天然砥石(ケース外の右端)
です。
とにかく
切刃面をフラットにする、
この1点のみを優先して研いでいました。
すると、中砥で研いでいるあたりから、
峰先行で引くときに振動が生じるようになりました。
その振動を抑える程度のゆっくりした速さに抑えて研ぐことにし、細かい番手につないでいきました。
最終仕上の天然砥石でもしばらく同じように研いでいたところ、砥泥の粘度が上がってきたあたりで、振動は生じませんが、ところどころ突っかかるようになりました。
面直ししてないときには時々起きる現象ですが今回はきちんと面直ししてたので、これは初めてのことです。
そこで研ぎ方を変えて、
突っかかる場所で集中的にぐりぐりと前後させるように研ぎました。
そこで手を離したら、刃が立ちました!
「写真写真」とカメラを持ってきて撮影するまでの間わずか数秒ほどの電光石火でしたが、その間に刃は
残念なことにちょうど倒れてしまいました。
今度はカメラを三脚に据え、立ったらすぐ撮影できるように準備してリトライした結果がこちらです。
数秒ですが、なんとか刃が立つようになりました!
自分としては「砥泥の粘度を高める」「刃と砥石の間に砥泥をいれつつ、その量を出来るだけ減らす」というような感覚でした。
ついでに裏も磨いて
合板にかけてみました。
今日試したことは「刃を立たせるため」それ自体という本末転倒な目的で研ぎましたが、これでようやく「鉋刃は自分で研いでます」と何とか言える端くれになれたような気がします。
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